米国や韓国の選挙において、良くも悪くもネットが大きな影響力を与えていることがたびたび報じられる中で、日本ではなかなかそういった動きが起きません。なぜでしょう?

「若者が政治に関心を持つようになると政権与党にとって不利だから、政府がネットのような若者が好むものはできるだけ選挙に関わらせないようにしているから」…などと言ってしまうと話が終わってしまうしすぐに「政治が悪い」にしてしまうのは能がないし、何よりせっかく切込隊長さんがわたしの最近の興味分野のネタを書いてくださったので、わたしもこの件について考えてみようと思います。

米大統領選:保守系ブロガーから学者に集中砲火(上) HotWired Japan より

ブログを書いて商売になるかどうかは成功者待ち 切込隊長BLOG(ブログ) より

海外のサイトとか言いつつ、わたしが普段から見ているのは英語圏のゲームのサイトだったりするので「お前なんかがジャーナリズムとか語るな!」とか言われちゃうと返す言葉もないのですが、まあたまには海外でおもしろいニュースがあったときなどに、つたない英語力で海外サイト見てたりはするのでそのつたない経験からでも充分に分かることといえば、日本には「企業の商売の為の企業サイト」と「個人の楽しみの為の個人サイト」というのが、もう見た目からして大きな隔たりをもって存在しているのに対し、欧米では「複数管理者による非営利の大規模サイト」が多数存在しているということです。
この、個人の趣味の域を超えた「政治経済に影響を及ぼすほどの大規模サイト」が欧米にて発達し、なぜ「ブロードバンド大国」日本にはなかなか生まれないのか、その背景について考えてみたいと思います。

CMSツール:
まず1つ最初に、「複数管理者による大規模なサイトの管理」を可能にするCMSツールの存在があります。英語圏には、サイト自体だけでなく大規模なフォーラムまで構築できるフリーソフトが多数存在しています。
ただ、これは単なる需要と供給の問題であって、需要があれば日本語対応のCMSツールもたくさん出てくるはずであり、需要がないから供給も少ないのだと見るべきでしょう。

PayPal:
欧米で、精力的な活動を行っているサイトにおいてよく見かけるのが(まあ、精力的でないとこにもたまにありますが)、「PayPal DONATE」等と書かれたバナーです。PayPalは、口座番号等を知らせる事なく、メールを送るだけで相手に送金できる小額決済サービスです。自分と相手、双方がPayPalに口座を持っていないと使えない為、欧米ではネットオークションの支払い等の為にPayPalがこの分野で圧倒的なシェアを持っています。というか、競合はほぼ無いんじゃあ?
ネット上での個人向けサービスを商売にする上でまず問題となるのは支払い方法です。イーバンク銀行がPayPalに目をつけ、ライブドアがそのイーバンクにこだわったのは全くもって正しい判断だと言えるでしょう。結局モメちゃったのはよろしくなかったですけど。

チップの習慣:
しかし、いくら便利で手数料の安い送金方法があったところで、ユーザーがお金を払おうとしてくれなければ無意味です。
ここで大きな差となるのが、欧米には「良いサービスを受けたら対価を払う」チップの習慣があり、日本には無いことです。よく言われることですが、日本において「サービス」という言葉がしばしば「無料」の意味で使われるのが、その象徴です。「情報」や「接客」といった「形のないもの」はタダが当然、という感覚が染み付いているのです。
また、キリスト教圏では当たり前に行われる「寄付」という行為にも、日本人は馴染みがありません。

「良いサービス、気に入ったサービスを行う人たちにお金を払って応援する」意識を持ったユーザーと、集まった寄付によって更にモチベーションを高めるサービス提供者。この構図はジャーナリズム分野だけではなく、自作のCGや音楽、またフリーウェアの自作ソフトを公開している技術者のサイトでもよく見られる光景です。
欧米の「個人の趣味の域を超えたサイト運営」を後押ししていて、日本には欠けているもの。それは「PayPal」と「ユーザーからの寄付」の2つだと考える次第です。


以上、環境面の話でしたが、これは「欧米の大規模サイト」全般の話であって「ブログジャーナリズム」のみに関する事柄ではありません。
日本で「独立系ジャーナリズム」がネット上で育たない理由は何でしょう?

ブログを書いて商売になるかどうかは成功者待ち 切込隊長BLOG(ブログ) より

 そうなると、やはりブログで継続的に価値を持ちうるのは一次情報の創出をコンスタントに行える体制を整えた書き手(ユーザー)であって、商業化においても頒布するに耐える話題性や品質を持つものということになるだろうと思う。その場合、上記の「高尚な」議論は市場に沿わない。なぜなら、その「高尚な」議論によって構成される一次情報を切磋琢磨するべきブログ群が絶対的に不足しているからである。

う?む。その『政治や社会、ビジネスや思想といったアメリカ人が好む「高尚な」議論』を日本人が好まない理由は何でしょう??

1.政治の話をするヤツはイタいヤツだと思われる
周りが引く。「真面目ねー」とか言われて。
おまけに「政治=悪い人がする悪いこと」っていうくらいに思われてるから困ったもの。

2.経験的に、ネットで議論をふっかけるヤツはイタいヤツが多い
これホント。言葉遣いは普通、むしろ丁寧なくらいだから普通にやりとりしていたら段々と本性が出てきて、「あっちゃー、ヤバい人だったか。最初から相手にしなきゃ良かった」と後悔した経験が、ネット歴長い人なら必ずあるはず。そんなことが何度かあれば、よっぽどの江戸っ子気質の人でない限り「議論吹っかけてくる人」からは遠ざかるようになるし、自分もイタい人だと見られるのが嫌だから議論を持ちかけることも控えるようになってしまう。というか、実際になってます、わたし。

3.高尚な話をしたところでモテない
米国みたいにホワイトカラーとブルーカラーがガッチリ分かれていて、「高尚な話」についていけないと「ふう?ん、アンタあっち側の人なのね」と見下されるようなことがないので、若者が頑張って政治経済の知識を身につけたりとかしない。大学行っても遊んでばっかりだし。

…あんたそういう基準自体が高尚じゃないよと言われちゃいそうですが、そうはいっても若者が何かを始めるときのモチベーションっていったら「異性にもてるか否か」っていうのは大きいんじゃないですか?? というか大きいでしょう。
じゃあ日本で「高尚な話」がウケないのは、女の子が「高尚な話ができる男」を好まないのが悪いのか、男の子が「高尚な話を喜ぶ女」に価値を見出さないのが悪いのか、まあニワトリが先か卵が先かではあるのですが、まあ結局は両方のせいか…。


日本において、少数の大新聞が圧倒的シェアを誇っているのは、新聞の読者が「新しいこと」や「事実」を知ることを欲しておらず、「皆が知っていることを知りたい」と思っていることの現われだと言えます。知識欲よりも、「皆が知っていることを自分だけ知らないと恥だから読んでおく」というほうが上だったわけです。
ネットを使い、自ら情報を得ることを覚えた世代の人たちが、「皆が知らないことを知りたい」と望むようになったときが、大新聞の終焉なのでしょう。

ブログによるジャーナリズムがこれに取って代わるには、上記のようにいろいろと壁がありますが、わたしとしては是非そんな面白い世の中になっていって欲しいところです。例えモテなくても(笑)

小西恵理子さん、ブロガー新聞大変そうですが、最近「週刊!木村剛」は以前のようなIT系の方々から、メディア分野の方々へと中心層が移ってきて、皆さん頭の中に「オレ的ブロガー新聞」が出来上がっている雰囲気ですから、例えどんなものを書いたとしても不満が出たことでしょう。まずは皆さんから案を出してもらって、その上で「いいとこ取り」で作り上げていく、というのは、オープンソース的というかまさにブログ的な手法であって、とても良いアイデアだと思います。「読者に任せちゃっていいのかな」などとは思わず、まずは「皆さんのアイデアをまとめ上げるのが仕事」ということで、それはそれで大変な作業だとは思いますがどうか頑張ってください。
おそらく日本で初めてのものを初めて作る取り組みなのですから、「いずれ日本で参加型ジャーナリズムが普及したときに、余所がこぞって真似したくなるようなスバラシイ仕組みを、今のうちに知恵を集めて作っちゃうぞ♪」くらいのおつもりでぜひ♪

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3 Comments

今回のお話、大変おもしろかったです(^^)。
"日本で「独立系ジャーナリズム」がネット上で育たない理由は何"という話になると、突然卑近な話題になったので笑いましたが。

結局のところ、インターネットが生まれた国がアメリカですから、後発組の日本にはまだまだ根付いていないということなんでしょうな。他の国の事情も興味のあるところですが。
ただ、「後から欧米のものを真似する」というのは別にネットの話だけではなくて、(マスコミなんかを見ていても非常にわかりやすいですが)結局後々まで、どこかプロになりきれないゆがんだ形を残している事例が非常に多いんではないでしょうか。
この話は突っ込んでいくとありとあらゆる話に飛んでしまうのでここに留めておきますが。

基本的に、日本人は社会や政治にコミットしていく姿勢にかけている、ということもあるんでしょう。
それと「知的な雰囲気がする」というだけで今の日本では敬遠されてしまいますよね。あれは実は結構な問題ではないかと思ってたんですよ。
あのダバディー(元サッカー通訳のあのヒト)が慶応大学に呼ばれて公開講義(?)をやった時、あまりにも学生が何も知らないんで呆れたとか。こいつに言われたのは恥ずかしかったなー。真実をついてるだけに余計。

まだまだ日本のブログは発展途上だし、きっちりした知識を持って政治批評をできる人間は正直まだそんなにいないとは思いますが、ただ、今の段階でももっと自分たちの意見を積極的に伝えていこうという姿勢はあっていいんじゃないかと思っています。
特に拉致問題に関しては、小泉首相に対して批判するだけよりも、連携するなりして明確な姿として圧力団体になってしまえばいいと思っているんですけどね。

それと、議論をする人間が殆ど2チャンネルを通って来ているというのも、それはそれで問題だと思う(笑)。
長くなっちゃってごめんなさいね。

2チャンネル→2ちゃんねる
ごめんなさい(^_^;)
そういえば、まだはじめましてを言ってませんでした。
はじめまして、よろしくお願いします(笑)。

そうですね。他のいろいろな例を見ても分かる通り、時間が経っても、欧米と全く同じようにはならないのでしょうね。結局はウェブサイトもブログも、人が何かを作る為の道具ですから、国民性の違いが如実に出て当然、と。

とんぼがえりベイビーさん、こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!

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