Part1、Part2に続いて、SONYのプレイステーションの歴史をたどっていきます。
それは、SCEがSONYという巨大企業の子会社として誕生したときから、既に定められていた宿命だったのかも知れません。
Part3 光あるところに闇は生まれる
皆さんは、初代PSの形状をご存知でしょうか?
「ゲーム機=玩具」のイメージを排し、まるでAV機器のように薄くシンプルにデザインされたそのハードの表面には、プレイステーションのロゴと共に、SONYのロゴが入っています。
PSの発売元であるSCEのロゴではありません。SONYのロゴなのです。
それはまさに、SONYという巨大企業の一子会社でしかないSCEの立場を象徴していました。
さて、PSのその後の歴史を追っていきましょう。
97年1月。エニックス社が人気シリーズ「ドラゴンクエスト」の最新作、DQ VIIをPSに独占供給することを発表。同月下旬にはFFシリーズの最新作、FF VIIの発売が控えていました。
DQ、FFという、日本国内におけるサードパーティー製の2大キラータイトルを両方とも獲得することに成功したPSは、次世代ゲーム機戦争の勝者の地位を確実なものにします。
97年1月、ファイナルファンタジーVII(スクウェア)、約328万本。
97年7月、みんなのGOLF(SCE)、約213万本。
97年12月、グランツーリスモ(SCE)、約257万本。
98年1月、バイオハザード2(カプコン)、約203万本。
99年2月、ファイナルファンタジーVIII(スクウェア)、約363万本。
(以上の売り上げ本数は日本国内のみ)
90年代後半、PSは絶頂期を迎えました。数多くのソフトが発売され、上記のように、ダブルミリオン、トリプルミリオン級のヒット作を連発。80年代のファミコンブームに続く、PSブームの到来です。
むろん、全てが順調だったわけではありません。ゲーム機市場に新規参入したばかりのSCEにはノウハウが乏しく、PS発売初期にはソフトウェアの開発環境が整っておらず、サードパーティー製の目ぼしいソフトに欠ける状態でした。
しかし、後にあらゆるゲーム機メーカーがそのフォーマットを踏襲することになる、最初に共ゲーム機のロゴとSEが流れる印象的なTVCMなど、さすが世界のSONYとうならせる広告戦略で消費者への訴求を図る一方、他社ハードと比較してサードパーティーに有利な契約内容はもちろん、安価な開発機材の供給、ファンクラブ会員向けの体験版CD-ROM「プレプレ」でのサードパーティー製ソフトの体験版配布から費用SCE持ちのTVCM放送まで、サードパーティーの支援に力を入れることにより参入メーカーを徐々に増やしていったのです。
老舗ゲームメーカー、ナムコ社と提携することにより、開発環境も改善されました。
時には、PSにキラータイトルを独占供給するメーカーやそのタイトルを厚遇する姿勢が、他のサードパーティー企業の反発を招くこともありましたが、致命傷にまではなりませんでした。
というのは、ライバルのセガ社はアーケードゲームを主力とするゲームメーカーで、家庭用ゲーム機はあくまで自社のアーケードゲームの二次利用的な位置づけ。もう一方の任天堂はというと、アタリショックや海賊版の氾濫を恐れるあまり、サードパーティーに制限をつけてあくまで自分たちが市場を統制しようとする姿勢がもっと大きな反発を招いていたからです。
2000年3月。ゲーム業界の覇者SCEは、PSの後継機、プレイステーション2を発売しました。発売当初は対応ソフト不足という不安材料はあったものの、PSとの互換性がありPSのソフトもプレイできること、また当時普及しつつあったDVDのプレイヤーとしても利用できることからPSからの移行がスムーズに進み、ライバルのドリームキャスト(セガ)、ゲームキューブ(任天堂)、Xbox(マイクロソフト)を抑え、日本市場はもちろん、北米と欧州というゲームの3大市場いずれにおいても圧倒的な強さでトップシェアを獲得することに成功したのです。
2000年4月に発売されたSCEのキラータイトル「グランツーリスモ3 A-spec」は約173万本、当初予定より遅れて2000年8月に発売されたPSのDQ VIIは約400万本と、記録的な売り上げを達成。SCEの地位は磐石であるかに見えました。
しかし、明るい表側からは見えないところで、闇は徐々に広がりつつあったのです。
元凶は大きく2ありました。
1つ目は、ゲームの大作化の問題です。
PS2は、3D描画性能に優れたPSの設計思想を受け継ぎ、より高性能、より大容量のゲーム機として登場しました。ゲームファンたちは、PS2のソフトには当然より緻密でより美しい作品を期待します。しかし、ソフトの大作化は開発期間の長期化と開発費の高騰を招きます。ソフトの内容にもよりますが、2年以上の開発期間と億単位の開発費がかかるのが当たり前という状況になっていました。規模のある企業であっても、これでは1?2作失敗すれば会社全体が傾きかねません。
サードパーティー参入のハードルを下げることで対応ソフトウェアを充実させていたPSの強みを、SCEは高性能化と引き換えに放棄したのです。
また、ゲーム内容がより高度化、複雑化していくにつれ、コアなゲームファン以外の消費者は、段々と最新ゲームについていけなくなっていきました。「パラッパラッパー」や「どこでもいっしょ」(SCE)など、かわいらしいキャラクターやオシャレでカッコいいゲームで女性などのライトユーザーを引き付けていたPSの強みをも、SCEは徐々に失っていったのです。
では、リスクの高いPS2ソフトの開発についていけなくなった中小規模のゲームメーカーは、一体どうしたのでしょう?
撤退したり、iモードやパチンコ業界にシフトしたメーカーもありました。
そして実は、ゲーム機市場には据え置き型の他にもう1つ、携帯型ゲーム機という市場があります。そしてこの分野は、1989年にゲームボーイを発売して以来、任天堂の独壇場でした。1996年発売の「ポケットモンスター 赤・緑」はそれぞれ400万本以上を売り上げるなど、年長のゲームマニア層をセガやSONYに奪われた後も、依然として安価で手軽な携帯ゲーム機市場を中心に子供たちの支持を集め続けていたのです。
携帯ゲームは中小メーカーの受け皿になっただけではありません。大手メーカーであってもハイリスクな大作ソフトばかりそう何本も作っているわけにもいかないことから、SONYのハードに開発の主軸を移したゲームメーカーも、ほとんどはゲームボーイにもソフトを供給し続けていました。例外はPS参入の際に完全にケンカ別れしたスクウェアくらいでしょう。
もう1つの闇は、SCE自身を覆っていました。
家庭用ゲーム機市場への参入当初から一貫してファブレス経営を続けている任天堂やマイクロソフトと違い、元々大手家電AVメーカーであるSONYは最初から多数の子会社や工場を抱えていました。つまりSONYのゲームビジネスは、ゲーム機の研究開発を行うのも自社なら、部品を製造するのも自社。ソフトのパッケージを作るのもCD-ROMをプレスするのも自社グループなのです。プレイステーションの大ヒットがグループ内に与えた影響は絶大でした。
営業利益1000億円を叩き出すようになったゲーム事業は、当然ながらSONY本体にとっての主力事業の1つに位置づけられるようになりました。
2003年4月、当時SCE社長だった久夛良木氏がSONY本社の執行役副社長に抜擢されます。当時このニュースを聞き、ゲーム産業が既存のエレクトロニクス産業の上に立ったのだ、と喜んだゲームファンの方も多くいらしたようです。
2004年4月、SCEはSONYの完全子会社となります。これらの変化がプレイステーションの戦略にどのような影響を与えたか、ゲームファンとゲーム業界の人間たちは、程なく目の当たりにすることになるのです。
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「Part4 全てSONYから学んだ」近日公開。Part4で終わるはずです。…たぶん。
注1:この文章はフィクションです (←大人の事情でいちおう書いておきます(笑))
注2:記事中の売り上げ本数は公式発表でないものもあるので参考程度に見てください
美夜さん
このSCEの影が出始めた時期って、
SONYショックだとかでSONY本業のAV事業がコケ始めた時期だったと思うんですよね。
そんな中で1,000億の営業利益出す事業があって、
それがグループ内の赤字の補填にもなって重要性が増したのも、今思えばSONY自体に良くなかったんでしょうね。AV事業の抜本改善にもつながらず、PS関連の自社製造の依存を強め、ずるずる行ってしまった感が…
久夛良木氏がSONY本社の執行役副社長ってのも懐かしいですね。。
この頃ってSCEは天下だったわけですが、それが驕りにもなったような気が(当時の久夛良木氏の発言などを見ても)…
>kt- さん
そうそう、その通りです。よく覚えていらっしゃいますね!
あのころのPSは怖いものナシに見えましたよね、まさに。
久夛良木氏の発言の数々については、ネットでもあちこちで書かれているのでわたしは書きませんが、ホント「なぜそんなこと言っちゃうかなあ」と他人事ながら心配になってしまうようなのが多々ありましたね。
こんにちは、紫月様。
なるほどねぇ・・・この記事を読んで、ここ数年PSPやDSのソフトばっかり出て、据置機のソフトがあんまり出なかった理由が分かりました。
不思議だったんですよね。なんでこういうのばかり出るのか。
私は携帯機のちっちゃい画面でちまちまやるのがどうもウケなくて購入してません。
しかし、今月半ばにはファイナルファンタジー13がとうとう発売でしょう?(実はRPGファン)
今まで無視してきたけど、もういよいよ買わなくては!とおとついPS3買いました。
早速、初期設定などやってみたんですが、ネットもできればゲームも買えるという万能ぶりにちょっと怯みました。
なんか・・・パソコンみたい・・・
とにかく、ハードとソフトで4万円近い散財です。
今年の年末は、豪華ディナーも1泊旅行ともおサラバ。うちでひっそりゲームでもしてます。
>華乃 さん
こんにちは。
クリスマスのディナー代を節約してでもゲーム機を買ってくださる方は、ゲーム業界から見ると、とっっっってもありがたいお客さまです! 推奨です!(笑)
でもホント、気軽に買える金額じゃありませんよね。どうしてこうなっちゃったんだSONY、という話の続きを書くはずだったのが、滞っています…。